がん患者の家族日記

腹膜播種の妻と過ごした体験談

第96話 幸せは感じるもの

〈がん患者の家族の体験記〉

このBLOGは、がん患者の家族の回想録です。2010年~2019年までの9年間、大腸がん(横行結腸)・卵巣への転移・腹膜播種・肝臓への転移・腸閉塞でも、とても前向きに生き抜いた妻。患者家族である私が、その当時に書いた日記をもう一度読み返し当時の患者家族の気持ちを振返ってみました。

今日は、2018年9月の日記を読み返してみました。

 

2018年9月21日(金)の日記

・短時間勤務を終えて帰宅する。
・玄関で「ただいま~」と言うと、奥の和室からハリのある声で「おかえり~」。
・こんなちょっとしたやりとりが嬉しくてありがたい。回復してきている証である。
・幸せってのは、こんなことなのだと思う。
・できなくなったことを悔やむのではなく、できることでたくさん楽しもうと思う。

ハート形の石がある河原の石垣(長崎 眼鏡橋付近)

〈2018年の9

9月18日は、妻の56歳の誕生日でした。ふたりで誕生日を祝いました。大切に思う人と節目の行事を迎えられることは、とても幸せな事だと思います。お正月、大晦日、誕生日、結婚や出産などの共通の記念日を迎えたり桜などの季節の花を一緒に見ることは幸せです。

9月20日は、退院してから初めてのJ大付属練馬病院の診察でした。いくつかの検査を実施しましたが異常な数値はなく留置したステントも機能しているとの結果でした。前向きな妻に主治医のM先生は驚いていました。やはり妻はすごい人だと思いました。

9月30日には、息子夫婦が8月に生まれた孫を連れて我が家に来てくれました。私は出産した病院で一度会っていましたが、妻はこの日が初めての対面でした。妻が孫を抱く姿を見て感動しました。そして、この喜びが長く続くことを祈りました。

〈今も感じる幸せ

私はあたりまえに明日が来ると思い、自分自身の残された時間を意識して暮らすことはありませんでした。しかし、妻が病気になってからは〈与えられた時間〉から〈生きてきた時間〉を差引いた〈残された時間〉をありがたい明日と思う様になりました。ふたりで幸せに過ごしたい、大切に過ごしたい、そう思いました。

「幸せは、なるものではなく感じるもの」

そんな風に思います。長くまっすぐな道の先に幸せの花畑があって、そこに行くことが幸せだとすると、残された時間の少ない人は幸せになれないことになります。大切な人と一緒に花畑に向かって歩き続け、たとえ花畑に行きつくことができなくても、足元に咲いているタンポポなどの草木をみて、一緒に「きれいだね」と会話をすることができたら、たぶんそれは幸せなのだと思います。

今も誰もいない家に帰った時に「ただいま~」と言って家に入ります。奥から「おかえり~」という声を聞きながら・・・

                               

お読みいただきまして、ありがとうございます。

・次回の家族日記/第97話は

 〈近くへドライブ〉

を2022年7月27日(水)を予定しています。