第106話 さよならの日
〈がん患者の家族の体験記〉
このBLOGは、がん患者の家族の回想録です。2010年~2019年までの9年間、大腸がん(横行結腸)・卵巣への転移・腹膜播種・肝臓への転移・腸閉塞でも、とても前向きに生き抜いた妻。患者家族である私が、その当時に書いた日記をもう一度読み返し当時の患者家族の気持ちを振返ってみました。
今日は、2019年7月の日記を読み返してみました。
2019年7月27日(土)の日記
・夕方EがYくんと病院に来た。ベッドで横になっているママにYくんを紹介するとママはYくんの手を握り微笑んでいた。
・ママは語ることも少なくなり、午後になると計測器がセットされた。
・夜になって眠りにつくと一定のリズムで呼吸をしていて安心していたが、22時20分頃に静かに眠りについた。
※ E:娘のこと。Yくん:娘の彼氏のこと。
〈2019年の7月〉
7月25日(木)、腸閉そくの治療のためJ大付属練馬病院へ入院しました。
7月26日(金)、息子とお嫁さんと孫がお見舞いに来てくれました。本来は2日後の日曜日に来る予定でしたが、孫が保育園を早退した事と台風が接近していた事もあり前倒しで来てくれました。妻はうれしそうに孫の足をさすりながら微笑んでいました。
7月27日(土)、娘が付き合っている彼氏と一緒にお見舞いに来てくれました。そして妻に紹介しました。妻は安心した顔をして微笑んでいました。ふたりは先日、入籍しました。
私は病院の近くにあるホテルに泊まっていたのですが、27日(土)はM先生が病室にベッドをひとつ用意してくれたので、息子と娘と一緒に妻のことを見守っていました。静かに呼吸を繰り返し穏やかな、いつものように優しい顔をしていました。気がつくとベッドの横にあったモニターが静かに平らになりました。
「長い間ご苦労様、頑張ったね。そして、ありがとう」
〈妻の一生〉
妻は19歳の時に私と出逢い57歳でこの世を去りましたました。38年間を一緒に過ごしました。私は妻と出逢ったことでとても幸せでした。妻を亡くした今も妻との日々を思い出すと幸せです。妻の面影のある子供たちが新しい家族を作り、幸せに暮らしているのを見るとさらに幸せを感じます。
妻はとても親切な人でした。小さなことに幸せを感じている人でした。自分勝手な私との38年の暮らしの間には、嫌な思いを感じさせた出来事が山ほどあったと思います。妻は幸せだったのだろうかという不安を感じています。私にとって妻は、ひまわりの様な存在でした。私はそんな妻を想いながら日々を過ごしています。
妻の一生が「私も幸せだったよ」と思ってくれることを祈りながら・・・
お読みいただきまして、ありがとうございます。
・次回の家族日記/第107話は
〈ひとりの暮らし〉
を2022年8月31日(水)を予定しています。