第103話 最期のお花見
〈がん患者の家族の体験記〉
このBLOGは、がん患者の家族の回想録です。2010年~2019年までの9年間、大腸がん(横行結腸)・卵巣への転移・腹膜播種・肝臓への転移・腸閉塞でも、とても前向きに生き抜いた妻。患者家族である私が、その当時に書いた日記をもう一度読み返し当時の患者家族の気持ちを振返ってみました。
今日は、2019年4月の日記を読み返してみました。
2019年4月7日(日)の日記
・風もなく暖かだ。柳瀬川の桜が満開の一日だ。
・ママと一緒に昔なら散歩で行った柳瀬川へ、今日は車でお花見に行った。
・イスとテーブルを置き、コンビニで購入したおにぎりとお茶でランチを楽しんだ。
・穏やかに時が流れていく “いま” に幸せを感じる。
・ママはくたびれたのか、ふくらはぎが筋肉痛でお腹の具合も良くないと言って夕食は食べないで過ごした。良くなってほしい。
〈2019年の4月〉
4月5日は、母が入居する施設を訪ねました。車いすの母と一緒に施設の庭に咲く桜を眺めました。母は「今年も桜を見ることができて幸せだ」と言っていました。そして7月11日に永眠しました。
4月7日は、妻と自宅近くの柳瀬川を訪ねました。歩くのがつらそうな妻でしたがゆっくりと歩いて、持って行ったキャンプ用の椅子に座り、一緒に桜の花を眺めました。妻はとても優しい顔をして、きれいな桜と周りで楽しそうにお花見をする家族連れを見つめていました。そして7月27日に永眠しました。
私を育ててくれた母、私を支えてくれた妻。一緒に桜の花を眺めた春でした。
〈大切な瞬間〉
この春の日のひと時を過ごしている時は“これが最期の時”とは思っていませんでした。今となってみると最期の時となってしまいましたが、母や妻と過ごしたお花見のひと時を、穏やかな気持ちで大切に過ごすことができて良かったと思っています。コロナ予防で人と会うことを控える日々ですが、人と一緒に過ごす時間は “大切な瞬間” だと思って過ごす様にしていきたいと思います。
一期一会の言葉を胸に秘めて・・・
お読みいただきまして、ありがとうございます。
・次回の家族日記/第104話は
〈最強の処方箋〉
を2022年8月20日(土)を予定しています。