第55話 骨盤底にも転移
〈がん患者の家族の体験記〉
このBLOGは、がん患者の家族の回想録です。2010年~2019年までの9年間、大腸がん(横行結腸)・卵巣への転移・腹膜播種・肝臓への転移・腸閉塞でも、とても前向きに生き抜いた妻。患者家族である私が、その当時に書いた日記をもう一度読み返し当時の患者家族の気持ちを振返ってみました。
今日は、2015年4月の日記を読み返してみました。
2015年4月16日(木)の日記
・J大付属練馬病院に行く。
・肝臓への転移は左葉に一つだけだが、膀胱の裏にある骨盤底付近にも転移の疑いがあるとの説明があった。腹膜内への播種があった場合は、開腹しても何もせずにお腹を閉じることになるとのことだ。
・標準治療では、腹膜内に腫瘍が発見された場合の治療は、目で確認できる腫瘍を切除しても目に見えない腫瘍がある可能性が高いため、切除手術はしないで抗がん剤治療が基本らしい。
・いまこそ自分がしっかりしなければ!!
〈2015年の4月〉
自宅近くの公園や河原には、例年同様に桜の花がきれいに咲いていました。私たちには乗り越えなければならない壁の高さを感じる春でした。私たちの希望は、肝臓の腫瘍と骨盤底付近の腫瘍を切除してもらうことでした。しかし、病院としては標準治療に従い5月8日に予定していた肝臓の手術は中止し、抗がん剤治療を実施するということでした。
色々なことを考えた春でした。4月24日の21時過ぎの病院の相談室には、妻と二人の子供、妻の両親、そして私がいました。もう一度手術のお願いをしました。
〈持ち続ける希望〉
3日後の4月27日にM医師から連絡があり、翌日28日に私はひとりでM医師を訪ねました。病院内で開催されるカンファレンス会議で、M医師は私たちの想い伝えてくれたのでしょう。理解してくれる医師がいて肝臓の手術を実施することになりました。骨盤底付近の腫瘍が直腸にできた腫瘍であれば、切除し人工肛門を取り付ける。骨盤底付近の腫瘍が腹膜内に播種した腫瘍であれば、そのまま閉腹とするとの説明でした。
当初の「手術はできない」が「手術はできる」になりました。目の前にある高い壁に、小さな踏み台ができたような気持になりました。
お読みいただきまして、ありがとうございます。
・次回の家族日記は
〈3度目の手術〉
を2022年3月5日(土)に予定しています。