第1話 がんの告知
〈はじめまして〉
横行結腸がん・卵巣転移・腹膜播種・肝臓転移・腸閉塞に罹りながらも、前向きに生き抜いた妻。
これは、病気の妻と一緒に過ごした9年間の「がん患者の家族日記」です。
当時の日記を読み返しながら、患者家族である当時の気持ちを書いてみました。
2010年12月3日(金)の日記
ママが大腸がんの疑いでF病院へ入院した。今日のところ良性か悪性かの特定は不明らしいが、画面には大腸を塞ぐような大きな腫瘍が映し出されていた。放っておくと腸閉塞を起こすとのことで即入院となった。手術日は約2週間後。手術後3週間位は入院する予定との説明を受けた。手術後に実施する病理検査で良性か悪性なのかが判明するらしい。家族で協力して乗り越えよう。
〈長く感じた手術までの2週間〉
患者である妻も一緒に説明を聞かされる状況に驚き、そして動揺しました。医師からの説明に追いついていけない自分と、診察室を出て妻にかける言葉を探す自分がいたことを記憶しています。
入院手続きを終えて病室に入り、説明された内容の理解ができてくると2週間後では病気が進行してしまうのではないかという焦りが湧いてきました。
安全な手術を実施するために必要な時間であるということを理解したのは、ずっと後になってからでした。
〈家族でのワンチームを誓う〉
パート勤めの妻は48歳、会社員の私は50歳。結婚して25年が過ぎた時でした。大学生の息子は20歳、高校生の娘は17歳でした。帰宅して病院での出来事を子供たちに伝えました。
そして3人で誓った合言葉は
元気になった妻であり母を、必ず家に連れて帰ろう!
でした。
妻に任せきりだった家事は、3人で手分けをしました。料理や洗濯など、子供たちは上手にやりこなしていました。一番できなかったのは私です。洗濯機の使い方などは子供たちが紙に書いて貼ってくれました。困ったおやじで反省しました。
妻の不安を軽くできればと思い、1冊のノートを用意しました。
「ファミリーニュース」
というタイトルの交換ノートです。
家にいる3人は、学校でのできごとや家事での笑える失敗や質問などを書きました。妻は、家事に関する質問の答えや病院でのできごとなどを書いていました。
入院して不安でいっぱいなはずなのに笑顔で過ごす妻でした。
なんて素晴らしい人なんだと思いました。
お読みいただきまして、ありがとうございます。
次回の体験談は
〈手術とその後の日々〉
を予定しています。