がん患者の家族日記

腹膜播種の妻と過ごした体験談

第2話 がんの手術

〈がん患者の家族の体験記〉

横行結腸がん・卵巣転移・腹膜播種・肝臓転移・腸閉塞でも前向きに生き抜いた妻。

これは、病気の妻と一緒に過ごした9年間の「がん患者の家族日記」です。

当時の日記を読み返しながら、患者家族である当時の気持ちを書いてみました。

 

 

2010年12月15日(水)の日記

雨空も飛んでいき朝から雲ひとつない晴天である。今日はママの横行結腸がん切除の手術日である。息子と自宅の近所を流れる小川から見える富士山と氏神様の水天宮に手術の無事を祈願してF病院へ向かう。ママはとても落ち着いていて「天命に従うのみだね」と語っていた。偉い人だ。予定よりだいぶ早く切除手術は無事に終わった。あとは生検の結果待ちだ。リンパ節への転移が無いことを祈るばかりである。

 

 

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ホタルのいる近くの小川

〈手術日までの12日間〉

入院から手術日の今日までの12日間がどれだけ長く感じたことか。CTなどの検査をいくつか実施してその結果を聞く毎日でした。結果を聞くまでの時間がどれだけ長く不安だったことかを思い出します。その一方で手術日までの妻は、もちろん不安な気持ちでいっぱいだったと思いますが、家族に心配をかけないようになのか、いつもと同じように笑顔を見せてくれていました。

手術の2日前に主治医のK医師から手術内容の説明を受けました。この時に、心の中で「K先生。前の晩は酒を控えて、どうぞ万全の体調で、たくさんの患者さんがいるのでしょうが15日は妻のことに集中して、最高の状態で出勤し、そして手術をしてください」などと、自分勝手なことを思っていました。

 

〈説明の時間より早く終了した手術〉

2日前の重要事項説明では、手術時間は7~8時間と聞いていました。病院の廊下にある長椅子で祈るようにして無事に手術が終わるのを待っていました。テレビドラマで見る光景そのままでした。

予定よりだいぶ早い時間に手術が終了したため、何か良くないことでもあって手術を途中でやめたのではないかなどと思いました。実際は、腸の癒着が少なく順調に切除できたとのことでした。ホッとしたところで、プレートにのせた切除したばかりの腫瘍部分の腸を見せられたことを鮮明に覚えています。

患者本人も患者家族も、はじめての経験の連続なので、出会う出来事のすべてに驚きと不安を抱えています。そんな不安な気持ちを支えてくれる人やサービスがあると不安は軽減するのだと思いました。患者家族のなかには、ひとりで苦労を抱え込んでしまう方が多いのではないでしょうか。

この頃の私は、ふたりの子供たちと病気の状況を共有し、家事は分担して過ごす「3人編成の医療チーム」でした。この医療チームは、9年の間に力強い仲間が増えて膨らんでいくのでした。

 

〈手術後の日々〉

手術の2日後の17日、会社の帰りに病院を訪ねると妻は集中治療室から病室に戻っていました。テレビを見て笑っている妻をみて心から安心しました。

手術から4日目、この日はガスが出たそうで、またまた皆で大喜びでした。オナラというこれまでの暮らしでは当たり前の出来事に大喜びをすることで、何とも言えない幸せを感じました。

その翌日の20日、病室に向かう途中で、お見舞いに来ていた息子とバッタリ。元気な姿をイメージしながら病室に入ると、笑顔だった妻が38度を超える高熱で辛そうにしていました。

その後数日の間、この状態は続くことになりました。

                                   

 

お読みいただきまして、ありがとうございます。

次回の体験談は
〈サンタクロースはいるのかも〉
を予定しています。