がん患者の家族日記

腹膜播種の妻と過ごした体験談

第78話 がん友

〈がん患者の家族の体験記〉

このBLOGは、がん患者の家族の回想録です。2010年~2019年までの9年間、大腸がん(横行結腸)・卵巣への転移・腹膜播種・肝臓への転移・腸閉塞でも、とても前向きに生き抜いた妻。患者家族である私が、その当時に書いた日記をもう一度読み返し当時の患者家族の気持ちを振返ってみました。

今日は、2017年3月の日記を読み返してみました。

 

2017年3月31日(金)の日記

・ママとふたりで、銀座にある「ギャラリー暁」で開催されている “Y宏太郎個展” を訪ねた。昨年末に亡くなったYさんのご主人が、Yさんを偲んで開催した個展だ。
・ご主人の数々の作品が並ぶなか、大きな半紙に “神氣” と書かれた筆文字があり、これはYさん本人の作品だった。とても力強く気迫を感じた。
・最期の頃は身体の痛みも軽減し、回りの人々へ感謝をしながら息を引き取ったとのことを聞き安心した。

  ※ Yさん:同じ市内に住む、同世代のがん患者の女性。

旅先で出逢った言葉(浜名湖の旅)


〈2017年の3

妻と私は、いくつかの “がん患者の会” に参加していました。そのひとつの会でYさんと出会いました。画家のご主人とふたり暮らしとのことでした。出会った頃は、腹水などでつらい思いをしていた頃で、実際の年齢より老けて見えました。その後、患者会で会うたびに少しづつ顔色が良くなり、実は私達より若い方であることがわかりました。

Yさんは患者会での会話が縁で、腹水の専門病院へ行ったり、緩和病院の情報を集めたりすることを始めたのだと思います。自分で自分の未来のために治療方法を考えて行動したのではないでしょうか。そのことで、心の目が前を向き明るさを取り戻したのではないかと、当時の私は感じていました。

画廊で拝見した筆で書かれた “神氣” の二文字。芸術的なセンスを持ち合わせていない私ですが、その筆文字から “生きることへの気迫” を強く感じました。

〈がん以外の課題

妻と私は9年間、がんとの共存生活をしました。その間、入院中の同部屋の方や患者会の参加者の方々と縁をいただきました。そして悲しいことですが、その何人かの方と別れる経験もしました。がん友と別れる妻の気持ちを想うと、私は言葉を口にできませんでした。とてもつらかったです。

Yさんはご主人との二人三脚でしたが、がん友のなかには一人で頑張っている方もいました。妻のがん友ですから大半は女性で、子供のこと・親のこと・夫のこと・仕事のこと、お金のこと、自分が一人暮らしであることなど、がん治療以外の心配事を一人で抱えて頑張っている方が少なくありませんでした。

現在一人になった私は、がん患者と患者家族の役に立てることに自分の時間を使う生き方をしたいと考えています。

                              


お読みいただきまして、ありがとうございます。

・次回の家族日記/第79話は

 〈広がる腹膜播種〉

を2022年5月25日(水)を予定しています。