がん患者の家族日記

腹膜播種の妻と過ごした体験談

第44話 玉川温泉の人々

〈がん患者の家族の体験記〉

このBLOGは、がん患者の家族の回想録です。2010年~2019年までの9年間、大腸がん(横行結腸)・卵巣への転移・腹膜播種・肝臓への転移・腸閉塞でも、とても前向きに生き抜いた妻。患者家族である私が、その当時に書いた日記をもう一度読み返し、当時の患者家族の気持ちを振返ってみました。

今日は、2014年5月の日記を読み返してみました。

 

2014年5月5日(月)の日記

秋田県玉川温泉。今日も天然の岩盤浴と温泉に通った。
・午後から雨が降り出したので、室内の岩盤浴を予約した。
・横浜から来ている男性は肺がんで、奥さんと娘さんと三人連れとのこと。かなり辛そうな状態に見えた。天然の岩盤浴で、奥さんが場所取りの順番待ちをしていた。奥さんも娘さんも優しい人柄だった。
・ママは温泉で、30歳代の女性と会話をしたそうだ。

  ※ 玉川温泉:がん患者に親しまれている秋田県にある湯治場のこと。

 

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天然の地熱による岩盤浴

 

〈2014年の5月

秋田県にある玉川温泉は、O三敬病院の患者会の方に教えていただき何度か通っていました。がんの患者さんに親しまれている湯治場です。強酸性の温泉と地熱による岩盤浴が親しまれる最大の理由です。療養目的のため連泊する方が多く、食堂や温泉や洗面所などでお会いすることが重なり、挨拶から会話になることがあります。温泉や岩盤浴に加え、この会話も親しまれる理由だと思います。

長期に渡って再発や転移などの不安を伴うのが “がん” という病気です。身体の不調を整えることに加えて心の不安を整えることも必要です。身体の不調は医師の皆さんの力をお借りしますが、心の不安は患者家族が主になるのだと思います。

〈たくさんの出逢い〉 

▷東京蒲田に住む女性(72歳)と秋田に住む女性は、ここで知り合った卵巣がんの患者さん同士で、お二人とも回復し予防を兼ね再訪している方々でした。
▷名古屋在住の男性は、前立腺がんと緑内障だったそうです。片足を引きずって歩いていたのが回復して、いまは落ち着いているとのことでした。
▷帰りの新幹線で妻が温泉で会話をした30歳代の女性と同じ車両になりました。私はその女性の席に座り、妻と女性は並んで座り大宮駅までお話をしながら帰りました。百万人に一人と言われる病気だそうで、大きな不安を一人で抱えている様子でした。

玉川温泉に来るたびに出逢いがあります。ここに集うみなさんには共通していることがあるように思います。相手が話すことだけを聞きます。自分が話せることだけを話します。必要以上のことは聞いたりしません。話したくないことは話しません。そんな距離感を保ちながら、同じ場所で同じ時間を共有しているのだと思いました。

                                 

お読みいただきまして、ありがとうございます。

・次回の家族日記は

 〈黒部立山の旅〉

を2022年1月26日(水)に予定しています。